■ プーランク    ピアノと 18 の楽器のための舞踏協奏曲「オーバード」

「オーバード」は 1929年、フランシス・プーランク(1899−1963)が30歳のときの作品です。20世紀ですから現代に生きている私たちとかなり近い世代ですね。日本の年号でいえば昭和4年です。今日ここに集まった皆さんの中にもすでに生まれていた人がいるかもしれません。そのくらい近い時代の作品であるせいか、この曲を聞くと、いわゆる「クラシック」とは違う音楽であるような感じがします。楽器の編成も独特で、ピアノを中心に各パートがソリスティックにそれぞれの持ち味を発揮できるように作られています。ちなみに「オーバード」の意味は「尊敬する人に敬意を表するために、その人の家の窓下または玄関で、朝か午前中に演奏する曲」となります。同じ形態で夜に愛を込めて演奏すると「セレナーデ」になりますね。

 ではこの曲がどのようにして誕生したかについて、作曲者自身の言葉を引用してみましょう。「 1929年ノアイユ子爵と子爵夫人が、彼らの別荘で開かれるパーティーのためにバレエ音楽を書いてほしいと私に依頼した。このことが、バレリーナとピアニストの両方に同時に焦点を当てるコンチェルトの作曲へと私をかりたてた。友人が18人の演奏者を揃えてくれた。これは個人のパーティーとしてはとびきり上等なことだが、ピアノが追加されることで音楽の表現手段がさらに増えた。こうしてこの二重の性質をもつ作品が生まれた」。プーランクの言う「二重の性質」とは「バレエ音楽」と「ピアノコンチェルト」のふたつを指しています。このふたつをくっつけてしまうというのは実に独創的なアイディアですね。このアイディア、「チャイコフスキーに先を越されなくてよかったー」と本人が思ったかどうか、今となっては知るよしもありません。

 このバレエ音楽でバレリーナはディアーヌ(ローマ神話で、狩猟と月の女神。女性の守護神)の役を演じます。本日は残念ながらバレリーナは出演しませんが、バレエのあらすじを簡単にご紹介します。「夜明け、仲間たちに囲まれて、ディアーヌは、彼女に永遠の純潔を強要する『ジュピターの定め』に反抗することを決意する。仲間たちは彼女をいたわり、彼女に弓を与えて、ジュピターへの反抗を思いとどまらせる。ディアーヌは悲しそうに弓を手に取り、そして森の中へ急ぐ。狩をすることで、恋の悩みを鎮めようと努めるのだ」。このストーリーも作曲者自身が書いたものですが、神話の世界ですね。みなさん、イマジネーションをふくらませながら実際の演奏をお楽しみ下さい。

(AZM)