■ ニコライ 歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲

 みなさんは「陽気な女房」と聞いて、どんな女性を想像しますか。私が最初に想像したのは、よく笑い、料理がうまくて恰幅が良く、井戸端で噂話に興じる女性たちでした。

 この曲を作曲したオットー・ニコライ(1810-1849)は、ウィーン・フィルの前身にあたるオーケストラの初代指揮者として活躍した人です。小柄ながら、歌手としてオペラのソロパートをこなせるほどの実力を持ち、指揮も巧みで、そして作曲家としても才能豊か。天才的な音楽家でしたが、惜しくも38歳の若さで天国へと旅立ってしまいます。

 歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」は、シェイクスピアの同名の喜劇が原作です。太っちょで大酒飲みの騎士、ファルスタッフが主役。彼がお金に困って2人の貴婦人に恋文を出し、金をせしめようとするところから物語は始まります。夫人たちは、ファルスタッフが浮いた手紙をよこしたことに腹を立て、さらに2人への手紙がまったく同じ内容だったと知って、大憤慨。彼を懲らしめようと計画し、首尾よく洗濯籠に押し込めてテムズ川に放り込むのですが、それだけでは気が済まず、犯した罪と魂胆を白状させようと、夫や子どもたちをも巻き込んで、森を舞台に芝居仕掛けで彼を痛めつけます。ファルスタッフをさんざんな目に遭わせたあと、夫人が「これからみんなで家に帰り、今夜のことを炉ばたで笑いあうことにしましょう」と歌って終わります。

 ニコライは、ローマやウィーン、ベルリンで活躍しましたから、イタリアの洒脱さと、ドイツの荘重さとを体感として併せ持っていました。この曲では、その両方が楽しめ、高らかに笑う夫人たちや、のしのし歩くファルスタッフが想像できます。

 序奏では、チェロとコントラバスが、のどかな田園風景を想わせるように歌います。続く主部では、3つの旋律が演奏されます。そして劇のクライマックスに登場する舞曲が奏でられ、賑やかに終わります。練習していても、まだmf (やや大きく)で音を少し抑えなくてはいけないところなのに、ついつい楽しくてf (大きく)の音量で演奏してしまい、「そこの大きさ、違うね」と注意されてしまうのです。 

 そういえば、この9月、友人の結婚式で、我が人生において3つ目のブーケを頂きました。世田谷フィルの「陽気な女房」の仲間入りも近いかも。

(ヴァイオリン Y)