■ ブラームス ヴァイオリン協奏曲 ニ長調

  第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ
  第2楽章 アダージョ
  第3楽章 アレグロ・ジョコーソ、マ・ノン・トロッポ・ヴィヴァーチェ

 ベートーヴェン、メンデルスゾーンの作品とともに「3大ヴァイオリン協奏曲」と称えられるこの曲は、ヨハネス・ブラームス(1833−1897)45歳のころ、彼が円熟期を迎え創作意欲に富んだ時期に作曲された傑作です。

 コントラバス奏者の長男として生まれたブラームスは、7歳からピアノをはじめ、10歳のときには神童と呼ばれました。19歳の時にハンガリーのヴァイオリン奏者レメニーに出会い、ロマ族(ジプシー)の音楽を教えられます。ヴァイオリン協奏曲に取り組んだのは、サラサーテが演奏するブルッフの協奏曲に刺激を受けたためといわれています。

 ブラームスはこの曲の作曲当初から、名ヴァイオリニスト、ヨアヒムの助言を受け、ヴァイオリンという楽器の特徴を効果的に発揮するため、数々の示唆を得ています。またベートーヴェンの後継者を自任していた彼は、この曲を交響曲的で複雑重厚なものに仕上げました。そのため独奏楽器は常にフルオーケストラと協奏し対峙することになり、ソリストには深い叙情に加え、高度な技術と豊かな音量が要求される難曲となっています。

 第1楽章は、オーケストラのみの長い前奏のあと、独奏楽器が別の主題で入ってきます。そして楽章の終わり近く、ソリストが力量を披露するカデンツァと呼ばれる長い独奏部分が聴きものです。

 第2楽章は、まず美しいオーボエの独奏に続き、木管楽器群さらに弦楽器が融合する繊細で美しい希望にあふれた導入部。つづいて哀切さや苦しみに満ちた中間部。そして諦観と受容を思わせる結末。あたかも人生そのものを表しているようです。そこには師シューマンへの祈りや、その妻クララへの思慕が込められているようにも聞こえます。

 第3楽章は、ハンガリー人であるレメニーやヨアヒムから影響を受けたと思われるハンガリアン・ダンス。勝利の歌。弾けるようなリズムに乗ってソリストの素晴らしい技巧がふんだんに披露されます。

 3拍子の小節2つ分を、大きい3拍子1回分として扱う、ヘミオレと呼ばれる変拍子や、小節の枠を取り払って拡大されたフレーズが、曲のあちこちに現れ、私たちは難渋しました。その一方で、簡潔でありながら重層的な音楽の構成と、深い叙情性の2つが見事に融合したこの曲の練習を、私たちは心から楽しみました。それにしても交響曲第2番と同じニ長調という明るいはずの調性にもかかわらず、ブラームスは旋律の中に短調的哀愁を潜ませ、私たちを惹きつけてやみません。     

(ヴァイオリン S)